2023年9月期 株主通信
2022.10.01 - 2023.09.30 YRGLM REPORT
トップメッセージ
一段上がったDXのステージ・拡大する当社の役割
株主の皆様にはいつも格別のご支援をいただき、厚くお礼申し上げます。
消費者行動や企業活動のデジタルシフトが進み、当たり前の光景となったニューノーマル時代。少子高齢化や労働人口の減少に伴う課題が迫る中、DXへのニーズが一段と高まっています。同時に、生成AIなどの高度なテクノロジーの利用が急速に進み、DXのステージは一段上がった状況にあると認識しています。
この状況下で、「データとテクノロジーによって、世界中の企業によるマーケティング活動を支援し、売り手と買い手の幸せをつくる企業になる。」をビジョンに掲げる当社が貢献できる分野は、ますます拡大していると考えております。
VISION2023の総括
売上構成のシフトと成長ドライバーの特定
2023年9月期は、中期経営方針「VISION2023」の3か年計画の締めくくりとなりました。
この期間に、当社は2つの大きな成果を得ることができました。
1つ目は、成長に向けた売上構成の変化です。創業以来、主力サービスであるアドエビスに絞り事業を進めてまいりましたが、「VISION2023」では事業ポートフォリオの拡充を図り、アドエビスの強化に加え、新サービスの拡大にも注力いたしました。
既存事業の利益を新サービスに投資し、新たな売上の創出に努めた結果、売上全体に占める新サービス売上の割合を24%にまで拡大することができました。
2つ目は、成長ドライバーの特定です。新サービスを拡充し成長させるためには、選択と集中が不可欠です。この3か年、数々の試行や検証、絞り込みを行った結果、「マーケティングプロセス支援」「EC構築・運用支援」の2つの成長ドライバーを特定することができました。
掲げていた業績目標(2022年11月発表)には届きませんでしたが、今後の成長に繋がる2つの成果が得られたことに、大きな意義を感じております。
2023年9月期の振り返り
新サービス領域の伸長で増収を実現、
成長ドライバーの創出にも着手
2023年9月期の連結売上高は、前期比8.8%増の3,626百万円でした。営業利益は前期比18.8%減の318百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比16.5%減の197百万円となっており、今年5月に開示した修正値のレンジ内での着地となりました。この1年間は、連結売上高における新サービス比率を全社KPIとしておりましたが、2022年9月期に比べて10ポイント伸ばし、24%にまで伸長させることに成功しました。
EC構築・運用とインキュベーション領域を含む新サービスの拡大により増収を実現しましたが、これらはまだ始まったばかりであり、利益率向上はこれからの分野です。一方、減収となったアドエビスは市場シェアが高く、高い利益率を確保している製品です。こうした背景から、全体としては増収・減益という結果になっています。
アドエビスについては、広告出稿量が少ない顧客に向けた低価格プランや、コンバージョンAPI「CAPiCO」の提供を開始し、新プラン・新ツールによる顧客層の拡大を通じたアカウント数の向上に取り組んでおります。
継続成長に向けた成長ドライバーの創出にも取り組み、マーケティングDX支援事業では、マーケティングプロセスの円滑化に向けた新サービスの開発に着手いたしました。コマース支援事業においては、EC構築・運用領域が大きく伸長し、セグメント売上の50%を占めるまでに成長いたしました。
VISION2027への展望
マーケティングプロセス支援とEC構築・運用支援で
成長をドライブさせる
「マーケティングプロセス支援とEC構築・運用支援の2軸の成長ドライバーによって、売上100億円達成への道のりを明確にする」これが2024年9月期から始まるVISION2027のテーマです。
「マーケティングプロセス支援」とは「マーケティング施策の効果改善サイクルを回したい」という顧客課題に対して、当社のテクノロジーと人的サービスによって解決するということです。
営業、顧客対応、ソフトウェア開発などの分野には、すでに改善サイクルを回すためのツール・サービスが存在します。一方マーケティングの分野にはこれまでそうした解決策がなく、各企業はマーケティング活動から得た知見を効果的に次の施策に活かせていない現実があります。
当社はこの状況を打破し、施策の計画から実行、結果の分析、そして改善までのマーケティングプロセスをトータルでサポートする手助けをしていきたいと考えています。その実現に向け、新たなSaaSサービスのリリースと継続的なアップデート、既存サービスのアカウント拡大とクロスセル促進、人的サービス・プロフェッショナルサービスの提供に取り組んでまいります。
もう一つの成長ドライバーである「EC構築・運用支援」は、ECサイトの立ち上げから集客までをワンストップで提供するeコマース支援サービスです。
引き続き激しい顧客獲得競争が繰り広げられている現在のeコマース市場。勝敗を左右する鍵は、オリジナルかつシームレスな顧客体験の提供にあると考えております。多くの事業者がSaaS型のECプラットフォームを利用してeコマースに参入していますが、その性質上、店舗独自の顧客体験を提供することは容易ではありません。また、SaaSを利用せずにオリジナルECサイトを構築する場合でも、構築、集客、運用までを一気通貫で対応し、シームレスな顧客体験を自社で生み出せる事業者は多くありません。
当社はEC-CUBE Enterprise版の開発、日本〜ベトナムにおける開発体制の強化、構築後の運用とマーケティング支援体制の拡充を通じて、エンタープライズのeコマース企業をトータルに支援するビジネスパートナーとして、確固たるポジションを築いてまいります。
2024年9月期の取り組み
加速的な成長に向け基盤を固める
2024年9月期は、「成長ドライバーを磨き上げ、来期以降の加速的な売上成長に導くための基盤を固める」をテーマに掲げています。VISION2027の最初の年でありますが、私たちは3か年計画ではなく、意図的に4か年の計画を策定いたしました。
各事業につきましては、マーケティングDX支援事業のマーケティングプロセス領域のアカウント数をKPIとして、まずはその反転を目指すべく、新プラン・新サービスの提供などの施策を確実に進めてまいります。またコマース支援事業においては、EC構築・運用領域の売上比率をKPIに定め、さらなる拡大を図ってまいります。
株主の皆様へのメッセージ
上場から10年―
これからも続く挑戦と成長
当社は2014年に東証マザーズ(当時)に上場して以来、2023年で10年目を迎えることができました。この10年間の挑戦と成長は、ひとえに株主の皆様からの温かいご支援があったからこそだと感じております。
改めて御礼申し上げます。
新サービスの売上拡大で成長の可能性を示し、「マーケティングプロセス支援」と「EC構築・運用支援」という2軸の成長ドライバーを特定したVISION2023。その3か年を経て、当社はVISION2027という新たな成長戦略を描くことができました。
2024年9月期およびその先の3か年において、当社はマーケティングプロセス支援のパイオニアとして確固たるポジションを確立し、各企業がマーケティング施策の効果改善サイクルを回すことができる社会の実現に寄与してまいります。またeコマース市場においては、構築・運用・マーケティングをワンストップで提供し、エンタープライズのコマース支援において一層存在感を高めてまいります。
こうした成長を株主の皆様と共有しつつ、売上100億円達成への道のりを確実なものにしてまいります。これからも変わらぬご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
代表取締役 CEO
事業別概況
SUMMARY OF BUSINESS
マーケティングDX支援事業
事業内容
データの計測、統合・分析、活用を通して国内企業のマーケティングDXを支援するサービスを提供しています。
デジタルマーケティング施策の成果最大化・最適化に必要な機能をワンパッケージで提供する「アドエビス」を主軸に、広告代理店の業務効率化を支援する「アドレポ」の他、計測データの活用を加速させる新サービス群の展開を通して、顧客企業のマーケティングDX支援に取り組んでいます。
当期の業績
複数の新サービスを展開するインキュベーション領域の売上高が前期比34.1%増の高成長も、主力ビジネスである「アドエビス」の新規獲得が苦戦し、全体では前期比0.3%増の2,933百万円での着地となりました。営業利益は、利益率の高い「アドエビス」の減収とM&A及び為替影響に伴うコスト増等により前期比8.5%減の255百万円となりました。
主力のマーケティングプロセス領域では、「アドエビス」の低単価プラン「Growth Step Program」とコンバージョンAPI「CAPiCO」を4Qより提供開始し、ターゲット拡大による「新規獲得強化」と中長期的な成長基盤形成に向けた「アカウント数拡大」に注力しています。
インキュベーション領域は、M&Aにより加わった各子会社の事業拡大と自社開発ツールの成長によりマーケティングDX支援事業の業績を牽引しました。
新たな成長ドライバーとしてマーケティングプロセス領域の新サービス開発にも着手しており、2024年9月期中の正式リリースを目指しています。
コマース支援事業
事業内容
ECサイトを構築するためのオープンプラットフォーム「EC-CUBE」の開発・提供と、EC構築からマーケティング支援までのECソリューションを提供しています。
「EC-CUBE」はオープンソースとして無料で配布しており、独自のデザイン・おもてなしを志向する多くのECサイトで利用されています。当社は決済・配送などECサイトに必要な周辺サービスをパートナーと連携して提供、ECサイトの売上成長とともに収益が上がるエコシステムを構築しています。
2022年5月からは独自性の高いECサイトの構築と運用支援を行う株式会社EC-CUBE Innovationsをグループに迎え、ECサイト構築からマーケティング支援までを垂直統合型で提供するソリューションサービスの構築に取り組んでいます。
当期の業績
EC構築・運用領域の拡大により売上高は前期比1.7倍の709百万円で大幅増収となりました。一方、営業利益はEC構築に伴う外注費及び体制強化のための採用・人件費等が増加し、前期比38.4%減の66百万円で減益での着地となりました。
EC構築のベースとなる「EC-CUBE」は、「アプリケーション」「環境」「人」を軸とした三位一体のセキュリティ支援を推進し、製品強化に取り組みました。EC構築・運用領域は、大型開発案件の進行により大きく売上を伸ばし、セグメント売上の50%を占めるまでに拡大しました。当初計画の40%以上を上期段階で達成し、想定を上回る結果となりました。大型案件の進行に加え、開発体制の強化と新規案件獲得にも注力しており、安定的な新規受注による継続的な成長を図っています。
トピックス
TOPICS
GPTW11回選出
Great Place to Work® Institute Japanが実施する2023年日本における「働きがいのある会社」ランキングにおいて11回目となるベストカンパニーに選出されました。
データでみるイルグルム
2014年の上場以降、10期連続で増収を続け2014年9月期の13.6億円から2023年9月期は36.2億円に成長しました。設立以降、23期連続増収を続けています。
広告効果測定プラットフォーム「アドエビス」は、86.7%の高い売上シェアで広告効果測定ツール部門においてNo.1※を獲得しています。
※日本マーケティングリサーチ機構調べ 調査概要:2021年6月期_指定領域における競合調査
累計ダウンロード数180万回超、推定35,000超のサイトで稼働中のECオープンプラットフォーム「EC-CUBE」は日本No.1 EC構築オープンソース※として認定されています。
※独立行政法人情報処理推進機構「第3回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査」による
近年積極的なM&Aにより領域の拡大を推進。6社のグループ会社とともに企業のマーケティングDXとコマースを支援しています。
従業員数は順調に拡大を続け、上場から10年で従業員数は3倍以上となっています。
データとテクノロジーでマーケティングを支援するイルグルムでは、エンジニアの構成比が最も高く従業員の38%を占めます。
男性社員と女性社員がバランスよく在籍しており、男女ともに活躍できる環境です。
多様な働き⽅を⽀援する環境づくりとコミュニケーションの推進により、Great Place to Work® Institute Japanが主催する「働きがいのある会社」ランキングにおいて、これまで計11回ベストカンパニーにランクインしています。
2011年より開始している独自の休暇制度「山ごもり休暇制度」は、対象従業員の100%が取得し、ワーク・ライフ・バランスの実現と業務の可視化を促進しています。